コンデンサ交換で復活!「異音の出る」カシオ・デジタルホーン DH-280

(この記事は2020年1月21日の投稿をリライトしたものです。)

「カシオ、デジタルホーン」は電子吹奏楽器の先駆けとなった名機(シリーズ)ですが、経年とともに構成部品の劣化が否めません。特に表面実装のコンデンサがウィークポイントでこれが悪くなると「ピキャ、ピキャ」というような音しか出なくなったりします。今回もその症状ですが、何せ経年品です。液漏れによる基盤の劣化が気になるところです。早速修理してみます。まずは修理前の動画から~

何処をどう操作しても「ピキャ」という音しか出ません。これは、(デジタルホーンの)コンデンサの劣化特有の症状で、この音が鳴る場合はほぼ間違いなくコンデンサが液漏れしています。

そして修理が終わった後の動画

下の動画が、修理後の様子です。きれいな音が出ています。

今回の修理は知り合いから依頼されたもので、私が目星をつけたとおりの故障でした。このデジタルホーンは大体このような故障が多く、修理としては比較的簡単な部類なのですが、長期間放置されていたりほかの部位が壊れていたりと複雑な故障の場合もあって(私の技術では)お手上げになってしまうこともあります。

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DH-280

後期に発売されたモデルだと勝手に想像しています。DH-280はロムカードで伴奏を演奏できる機能が付いていて形もそれまでのアルトサックス型からソプラノサックスやクラリネットのようなまっすぐな形に変わりました。※当時私はこの形はあまり好きになれませんでしたが。

今回の筐体には、ロムカードがついていませんでしたので伴奏を聞いてみることはできませんでしたが、こんな小さな楽器だけで伴奏をつけながら演奏できるなんて当時としては画期的なものだったと思われます。現代ならこれに似通ったものは数多くあるでしょうし、小さなものでも伴奏機能などももっと高度なことが演奏できる時代になっていますよね。

デジタルホーンの長所の一つに音程が簡単に変えられることがあります。これによって難しいキイでもハ調で演奏さえできれば音程を変えて合奏することができます。このキイを上げ下げできる機能が受けたのでしょうか?「簡単な楽譜と運指で演奏すればキイは楽器で合わせたらいい」本格的な演奏家でない私たちが音楽に親しむためのツールとしては優れものだったのだと思います。

※赤丸の部分-ここにもネジがあります。

ばらしていきます

全体の構造を把握しながらバラシにかかります。簡単に取り外せる部品は先に外して、あとでわかりやすいように保管しておきます。デジタルホーンは何度もばらした経験がありますので手際よくばらすことができました。ビスで留めてある部分には割と小さめなビスが使われていて紛失が懸念されます。

ビスなど無くしてはいけない小さな部品も入れ物に入れて保管しておきます。今回初めてばらす方はその都度画像を撮影しておかれることをお勧めします。私も初めてばらすものは組み立てることを考えながら携帯で写真を残しています。

外しにくい部分はないと思いますが、万一外れにくい部分があれば、何か引っかかっていないか?固着した部分がないか?など力づくで剥がしにかかる前によく観察してからにした方が賢明です。力業で「エイヤッとばかりに外したら配線がブチ切れた」なんてことは(私は)何回も経験しています。

大体ばらすことができました。組み立ての状況を再現しやすいように配線が通っていた部分を記憶しながら基盤の状態を確認します。基盤を取り出すときにも配線が劣化していないか気を配りながら取り出します。万一配線が傷んでいたり切れそうな感じがしたら、迷わず写真に撮ってやり直しに備えておきます。

壊れた部品は大体目星がついていますので、目視で確認します。やはり6V耐圧の電解コンデンサが怪しいようです。この時代の表面実装型の電解コンデンサは要注意ですよね。できれば全交換したいところですが、いじくりまわして壊れていないところまで壊してしまっては元も子もありませんから必要最低限にとどめておきます。

交換するコンデンサが決まったら、その周りのプリント部分の劣化も確認しておきます。あとで、電解液を清掃しなくてはならない可能性もありますから。できればフリーハンドででもコンデンサの位置と定格をメモして置ければなお安心ですね。

赤丸のコンデンサが怪しいようです。

交換にかかります

私は、表面実装のコンデンサには何度も痛い目に合っていますので新品を再実装するにも表面実装のヤツはなるべく使いません。足を曲げてでも昔ながらの部品を使います。ま、表面実装の部品を事細かな値までそろえていないのも理由の一つなんですが・・。

何とかうまく実装できました。今回の基板はそれほど腐食がなくて作業はしやすかったですが、コンデンサが壊れて長く放置された基板ですと腐食が大きくなって配線が無くなってしまったものまであることがあります。ある程度の配線なら再現できますが、これにも限度があって「ここまで来てお手上げ」ということも少なくありません。

作業の後でも(フラックスなど)アルコールで拭き取りますが、部品の取り外しと並行して、こぼれた電解液や接着剤の残りなどをアルコールと綿棒を使ってふき取っておきます。この時注意することは初めからあまりに強く拭き取らないことです。

プリント配線の細い部分が劣化していてふき取ったことによって壊れてどこにつながっていたのか分からなくなることがあるからです。回路図があれば再現も可能ですが時間がかかります。ちょっとした気づきのあるなしが成功と失敗の分かれ道になる場合がよくあります。

※交換後のコンデンサは、この後ボンドで固定。

これから修理に挑戦される方に

・基板に付いた部品を交換するのは細かな作業ですので準備を十分行って邪魔物のない台の上に作業のしやすいレイアウトで作業してください。もちろん十分な照明も必要です。ハンダ作業は一発勝負的なものですが焦ることはありません。上手くいかない気がしたら何度も押し付けないでいったん冷ましてからやり直した方がいいこともあります。

フラックスを使うのもいいと思います。使った後、きれいに洗浄(私は綿棒にアルコールをつけてふき取っています)することを忘れずに!フラックスにはメンタムのようなものと液体のものがあって、私は両方を使い分けています。ハンダは焦らず予備ハンダするべきところはきちんとしてやればそれほど難しい作業ではありません。

あ、そうそう「部品交換する場合で一番厄介なのは部品の取り外し」ということがよくあります。いや、たいていはそうです。基盤を壊してしまったら元も子もありませんので、この場合もあせらず、部品を再利用しないのなら「そっと壊して足だけハンダでとる」など事前に計画を立ててやった方がいいですね。色々書きましたが一言でいえば「備えあれば患いなし」事前の計画と準備が大切。ということでしょうか?  

では、また。

#カシオ#デジタルホーン#コンデンサ#液漏れ#ハンダ付け#表面実装#異音

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