煙樹ヶ浜のアジ釣りへ—釣り座に辿り着くまでの“道のり”を書いてみる

最近、いつもの岸壁でどうにもアジの気配がなく、しばらく足が遠のいていた浜のアジ釣りに久しぶりに出かけてみた。今回は釣果そのものではなく、釣り座に至るまでの行程について書いてみたい。

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向かった先は和歌山県の煙樹ヶ浜

延々と約4kmも続くと言われる、松林に抱かれた砂利混じりの浜だ。砂だけでなく大きめの石が敷き詰められている区画もあり、いわゆる「歩きやすい浜」とは言い難い。それでも、この浜に立つと独特の開放感と静けさがあり、何度訪れても飽きることがない。

アジの時合いはだいたい日が暮れてから。ときおり活性が高ければ明るいうちから釣れ始めることもあるが、多くの場合は電気ウキがはっきり見える頃になってようやくアタリが出る。にもかかわらず、私はなるべく明るい時間に釣り場へ向かうようにしている。理由は単純で、車を停めてから釣り座までの100mほどの砂利浜がとにかく歩きづらいからだ。大きな石がゴロゴロしている場所もあり、薄暗い中で歩くのは足元が危険。せめて行きだけでも明るい時間帯に、慎重に足を運びながら浜へ向かうようにしている。

浜釣りとなれば荷物はなるべくコンパクトに。サビキ釣り用の撒き餌や飲み物類はすべてクーラーボックスにまとめ、ロッドケースには釣り竿を2本、仕掛け一式を収める。浜に降り立ったあとで「しまった、あれを忘れた」と車へ戻るのは避けたいので、準備は念入りだ。

そして、クーラーボックスは子ども用のプラスチックソリに載せて引っ張るのが定番スタイル。大漁のときほど重くなるため、手で持つよりもよほど楽なのだ。しかし、砂利浜は意外と凹凸が激しく、今回は特に波の影響か岸際が大きくえぐれ、手前に向かって盛り上がる急斜面のようになっていた。
行き道では「下りだから問題ないか」と思っていたが、予想通り大変だったのは帰り道。砂利が一歩ごとにズルッと崩れ、斜面を登るのに苦労する。立って歩くのも難しいほどで、ソリを引き上げるのに何度も踏ん張らなければならなかった。

煙樹ヶ浜は“そこそこ”のアジが広い範囲で狙え、良い釣り場だ。しかし、休日でも釣り人で溢れかえらないのは、この”道中のちょっとした「障壁」”があるからだろう。簡単には辿り着けない場所だからこそ、自然の景観と静けさが守られているのかもしれない。

釣果の良し悪しだけでは語りきれない、この浜までの道のり。苦労もあるが、そこを乗り越えて竿を出す瞬間こそ、浜釣りの醍醐味なのだと今回あらためて感じた。