待ちに待ったカマスのシーズンが、いよいよ始まった。

いつもの釣り場にカマスの群れが回遊してきたという知らせが入った。例年より1か月ほど早いような気もする。いや、ひょっとすると去年までは私の情報網に入ってこなかっただけなのかもしれない。
理由はともあれ、今年のカマスはもうシーズンインしたのだ。
ところが、なんとも間の悪いことに、私は初日から野暮用が続いて釣りに行けない。釣り場から届く「今日は爆釣だった」「今日はさっぱりだった」という情報を聞くばかりで、悶々とした日が4日ほど続いた。
群れはまだ安定していないらしい。
「私が駆け付ける日は、どうか爆釣の日であってくれ!」
そんな願いを込めながら、ようやく釣行の日を迎えた。
夜明け前、まずは鯵釣りから

カマスは夜明け前、東の空が明るくなり始めるころから釣れ始める。
それならば、それまでは釣り座の確保を兼ねて鯵を釣ろう。そう考えて、午前1時には家を出た。
釣り場に到着すると、太刀魚狙いの釣り人が沖寄りのポイントを占めている。しかし、カマスの情報がまだ十分に広まっていないのか、それとも爆釣と不発を繰り返している状況を嫌ったのか、鯵やカマス狙いの釣り人は思ったほど多くない。
私は太刀魚釣り師の間に入ることはせず、「鯵ならこの辺り」といういつものポイントに釣り座を構えた。
もちろん、ここは夜が明ければカマスも狙える場所だ。
ほどなくして友人もやって来て、知り合い同士二人並んで釣りを開始する。普段は太刀魚に夢中になっている彼も、今朝はカマスの回遊情報を聞いて鯵とカマス狙いに切り替えたらしい。

やはりシーズン初めの新しいターゲットは、誰にとっても魅力的なのだろう。
暗いうちは太刀魚と鯵に分かれている釣り人たちも、夜が明ければ一斉にカマス釣りへ変貌する。そんな光景を想像すると、まだ薄暗い釣り場にいるだけでワクワクしてくる。
午前2時前には鯵釣りの準備が整い、気の早い私はカマス用の竿までセットしてしまった。
まずはいつものサイズの鯵がポツリ、ポツリと釣れ始める。
撒き餌が効いてきたのか、少しずつタナは上がってくる。しかし、釣れるペースは大きく変わらない。仕掛けを投入してしばらく待っていると、忘れたころにアタリが出る。
退屈するほどではないが、忙しいというほどでもない。
私のようなジジイには、このくらいがちょうどいいのかもしれない。

東の空が明るくなり、いよいよカマスの時間
強い風は吹いていないものの、夜明けが近づくにつれて少しひんやりしてきた。
ふと東の空を見ると、山の稜線から朝日の光が漏れ始めている。
「そろそろカマスの時間やな」
気の早い私は、誰かがカマスを釣り始めるのを確認してから竿を振るタイプではない。誰も竿を振っていないうちから、我慢できずに釣り始めてしまう。
そして、そんな日に限って一番乗りを果たすこともある。
ただし、その後の釣果が伸びず、最終的には友人たちの後塵を拝することもしばしば。
まあ、これも私の釣りパターン。最近では「これも釣りの楽しみ」と納得している。
今回も、そんな展開になるのだろうか。
カマス仕掛けを投入した。
ところが、釣れ始めるどころか、いきなり錘が底の何かに引っ掛かってしまった。
仕掛けロスト。
カマスを一匹も釣っていないのに、いきなり一つ目の仕掛けを失ってしまった。
なんとも情けないスタートである。
一転して怒涛の入れ食い!
気を取り直して仕掛けを交換し、再び投入する。
すると……。
釣れた。
そして、また釣れた。
そこからは、まさに入れ食いだった。
さっきまでの不安が嘘のように、カマスが次々と掛かってくる。3本付いていたカマスサビキの疑似針も、カマスに切られたり取られたりして、とうとう最後の一本になってしまった。
それでも釣れる。
最後の一本が切られたところで、さすがに仕掛けを交換する。
仕掛け交換の時間が惜しい。
そう思いながら新しいサビキを投入する。今度の仕掛けは針を盗られることもなく最後まで完走してくれた。
短い時間だったが、まさに嵐のような爆釣だった。
明るくなるとカマスはピタリ
周囲がすっかり明るくなってくると、それまで狂ったように釣れていたカマスが、嘘のようにピタリと釣れなくなった。
「しばらく待てば、また回遊してくるで」
そんな声も聞こえてきたが、釣り場全体には不思議な満足感が漂っていた。
皆、やるだけやった。
そんな放心状態にも似た、心地よい疲労感である。
やがて一人、また一人と竿を収め、釣り場を後にしていった。
私も竿を片付ける。
待ちに待った今シーズン初のカマス釣りは、こうして幕を開けた
初カマスは約40匹!次回への反省も

短時間の釣りだったが、結果は40匹近く。
初カマスとしては十分すぎる釣果だった。
ただし、反省点もある。
まずは仕掛けのロスト。釣果を伸ばせる時間帯に仕掛け交換を余儀なくされたのは痛かった。
とはいえ、仕掛けあっての釣り。根掛かりを恐れて糸を太くすれば、今度はカマスの食いに影響する可能性もある。これ以上太くするのには少し躊躇してしまう。
もう一つは、「カマスは底近く」という思い込みだ。
上層に浮き気味なカマスに道糸や幹糸を切られる知り合いもいて仕掛け交換に時間を浪費した釣り師も多かった。
今回も最初は底を意識しすぎていた。実際には状況に応じてタナが変わる魚。次回からは最初から決めつけず、その日のカマスの泳層をもっと柔軟に探ってみたい。
反省点はいくつかある。
それでも、久しぶりに味わったカマスの強い引きと、次々に竿先を絞り込むあの興奮は格別だった。
待ちに待ったシーズン初日のカマス釣り。
短い時間だったからこそ、その爆発力がより強く印象に残った。
さて、今シーズンのカマスは、これからどんな楽しみを見せてくれるのだろう。
次回は今回以上の釣果を……。
いや、欲張るのはやめておこう。
またあの群れに出会えることを楽しみに、次の釣行を待つことにしよう