「慣れた釣り場を離れてみたら…?」久々の別ポイント挑戦とその顛末

釣りという趣味は不思議なもので、慣れた釣り場に通っていれば安定して釣果が得られると頭ではわかっていても、つい“人の釣果話”に心を揺さぶられてしまう。今回もまさにその典型例だった。「あそこでカマスがよく釣れたらしい」という話を、ほんの少し耳にしただけで、気がつけば私はいそいそと別の釣り場へと向かっていた。

その釣り場は初めてではない。去年も一昨年も何度か足を運んだ場所だ。真冬には多くの釣り人が訪れるここは、全体的に水深が浅く、足元ではなく遠投して探るタイプのポイント。さらに頻繁に浚渫が入るような海域ではないため、海底には障害物が多く残り、当然ながら根掛かりも多い。残置物も多く、仕掛けをロストする覚悟が必要な、ある意味“修羅の釣り場”である。

慣れた釣り師であっても、ここでカマスを底付近まで落として狙うなら、1回の釣行で仕掛けロストなしで終えられたらラッキーと言える。そんな厳しい場所ではあるが、駐車スペースからのアクセスは悪くないし、比較的竿も出しやすい。そしてそれゆえに釣り座争いも熾烈だ。

私は今回、午前3時までには釣り座に入りたいと考え、まだ夜の深い時間に家を出た。しかし、現地に着いてみると既に数名の先客がいる。いったい彼らは何時からここに来ているのだろう。カマスが釣れ始めるのは午前5時30分過ぎ。そこから逆算すると、彼らは2時間以上(3時間?それ以上?)、この寒さの中でじっと待つということになる。まったく頭が下がる。

とはいえ、私も早起きした甲斐はあり、一等席から数えて5番目の位置を確保できた。その日どこが釣れるかは、正直カマスに聞いてみないとわからない。しかし長年の傾向から“強い席”というものは存在する。今回はそこに近い位置に入れたのだから、まあ良しとしよう。

問題は、そこから時合いまでの2時間余りをどうやって過ごすかである。軽トラの運転席で寒さをしのぎながらじっと待つのだが、これがなかなかの苦行だ。軽トラのコクピットは決して広くない。それに加えて、防寒着を着込んだ大柄な私が長時間座っているのだから、快適とは程遠い。友人には「エコノミークラス症候群になるぞ」と心配されるし、嫁さんからは「私のバンタイプの車を使ったら?」と言われたこともある。しかし、どうしても私は軽トラが気に入っている。釣りのあと魚臭さがついてしまっても気にならない“乗りっぱなし感”が好きなのだ。

さて肝心の釣りだが、結果から言うと今回は若者たちの方が圧倒的に強かった。細仕掛けでピュンピュン投げ、手返し良く探っていくスタイルが功を奏したのだろう。一方、私を含む年配連の太仕掛け組は、ドボンと落とすスタイルで攻めるもイマイチの状況。時合いも短く、午前6時前からポツポツと釣れ始め、空が明るくなると同時に終幕。あっという間だった。

振り返ってみると、以前通っていた元のカマス釣り場のほうが楽しめていたように思う。車横付けで釣りができ、足元で釣れるため仕掛けロストも少ない。何より、クーラーボックスに腰掛けながらでも気楽に竿が出せるのが魅力だった。ま、冬のこの時期、今回のように軽トラの運転席で時合いを待ち続けるのは変わらないけれど。

もちろん、新しい釣り場や別ポイントを攻めるワクワク感も捨てがたい。しかし、“早起きした分の楽しさ”を求めるなら、やはり慣れ親しんだ釣り場に戻るのも悪くない。横着と言われるかもしれないが、釣りは楽しむためのもの。自分の身の丈に合ったスタイルで、心地よく、そして長く続けられる釣り場選びも大切だとしみじみ感じたものだった。

次は原点回帰。元居た釣り場に戻って、クーラーボックスに腰かけながら、のんびり竿を出す釣りを楽しんでみようか。そう思わせてくれる釣行だった。