(※この記事は2018年8月27日付の記事をもとに写真を追加して再構成したものです)
世界に広まった日本食の代表の一つと言えば「寿司」ですね。
世界中どこに行っても寿司という呼び名で通用するくらいです。
そのルーツの一つと言われる「なれずし」が
今も紀州(和歌山県)の秋祭りの「定番の食べ物」として食されています。
紀州の水辺によく自生する「あせ(暖竹:だんちく)」
の葉で巻いた大きなサバ寿司を今では「なれずし」と言っていますが、
これは「本来のなれずし」ではなく酢を使った「早なれ」と呼ばれるもので、
単に「大きなサバずし=鯖の棒寿司」を「あせの葉(暖竹の葉)」で
巻いた押し寿司(棒寿司)なんです。普通のサバの棒寿司と違いがあるとすれば、
重しをかけて硬く締まった状態
(サバの身と寿司飯が一体化して歯応えがチーズか生の切り餅のようになったもの)
だということです。
寿司のルーツ
それでは、寿司のルーツの一つとされる「なれずし」とは、どう言うモノでしょう?
魚の保存方法として塩蔵以外に塩蔵の魚と米
(ごはん:古くは蒸飯=強飯)を使った保存方法がありました。
本来これが「なれずし」と呼ばれるものです。
歴史は古く奈良時代に皇室に献上された記録が残っているようで、
もちろん「皇室に献上」されるくらいですから「超高級品」だったと想像されます。
ただ、私たちが現代の感覚で思う寿司とは違って飯は発酵を助けるためだけに
使われていて飯を食べる目的ではなかったようなんです。(もちろん食べたでしょうけど)
これを仮に「なれずしの第1世代」呼んでみたいと思います。
「ご飯=飯」の食べ方は、古くは蒸して(強飯)食べられていましたが、
米飯が広まったころ炊飯して食べる「姫飯」が一般的になってきました。
このころから「なれずし」も魚だけを食べるものから「飯」も一緒に食べる
「生なれ」と言う食べ方が浸透し始めて庶民も「なれずし」
と言う高級品に手が届くようになっていきました。
生なれ」は飯と一緒に食べるという変化と「熟成期間の短縮」
と云う変化ももたらしていったようです。ただ「生なれ」という言葉のイメージは
「生煮え」のようにあまり良くないですね。
もう少しいい呼び名はないものでしょうか?
鯖のなれずし
私たちの地域で親しまれている「鯖のなれずし」所謂「本なれ」は、
前述の「生なれ」にあたると思います。「なれずし」の歴史では
「第2世代」にあたるのでしょう?
その後の寿司の進化と分化は目覚ましいものがあると思いますが、
現在私達が食べている「なれずし」は「飯」を「乳酸発酵」させたものではなく
初めから酢を使って、サバも塩で締めた後に酢を効かせて作ったものもあるようです。
いわば「第3世代」と言うことでしょうか。「第2世代」との共通点は
「あせ(暖竹:だんちく)」の葉で巻いていることと、
重しをして「カチカチ」になるくらいに締めている事です。
今では、第2世代のなれずしを作る家も少なくなったと思っていましたがたが、
旧家に嫁に行った妹が以前
「なれずしを作ったとき作りすぎて重しを懸ける桶に入りきらなかった分が出来たので」
と持ってきたものがありました。
それは「塩サバ」を「おにぎり」にのせて「あせ(暖竹:だんちく)」
の葉で巻いただけのものでした。
「家(ウチ)では伝統で、本なれ(生慣れを指す)を作るんやいしょ」
(やいしょ=和歌山市内とその周辺の方言で「です」「ます」の意味)
と言っていました。いまでも「本なれ」を作る「食べれる」家があるのには驚きました。
しかも、こんな身近に・・でもね。
「そりゃ食べれませんよ。普通の人には。臭いがすごくて。本なれは。」
魚のチーズ
「魚からできたチーズ」とはよく言ったもので「味」は知りませんが
「臭い」は相当なものです。いまでは「ふなずし」もそうですが「本なれずし」も
「臭いゆえに??」食通?だけのものになってしまったんでしょうね。
それとは対照的な庶民の「なれずし(早なれ)」の食べ方として、
付け合わせは「新生姜のスライス」と飲み物は「甘酒」です。
日本酒も良いのですが「野趣を味わう」と言う意味において「自家製の甘酒。
それも発酵がやや進んだ奴」が最適です。秋祭りの日には、
こんなシンプルなメニューですが「たらふく飲み食い」してください。
神輿を担いだりとスタミナが要る祭りの事ですので高カロリーな事は言うまでもありません。
そりゃ「成人病」なんて考えもしなかった時代の食べ物ですからね。
では、また
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