都会から時間をかけて和歌山の海へ釣りに来たものの、「時合まで時間が余る」「海況が悪くて釣りにならない」といった状況に遭遇すること、ありますよね。キャンプを兼ねた釣行なら焚き火や料理を楽しむなどの選択肢もありますが、釣りメインの場合は手持ち無沙汰になりがちです。
そんなときにおすすめなのが、熊野古道の「王子跡」巡りです。和歌山には温泉や食べ歩きスポットも多いですが、近頃は混雑することも多く以前のように気軽に楽しむのが難しいこともあります。そこで、歴史と自然を感じられる「王子跡」巡りを提案したいと思います。
熊野古道・紀伊路の「王子跡」とは?
熊野古道といえば、中辺路(なかへち)、小辺路(こへち)、大辺路(おおへち)などが有名ですが、それ以前から長く使われていたのが「紀伊路(きいじ)」です。奈良時代や飛鳥時代から都と熊野三山を結んだこの道には、熊野九十九王子と呼ばれる社(王子)が点在しており、古来より参詣者が旅の途中で祈りを捧げた場所でした。
紀伊路は比較的観光地化が進んでいないため、多くの王子跡が静かに佇んでいます。これがかえって、喧騒から離れて熊野詣の歴史をじっくり感じられる魅力になっています。
釣り場から車で行ける王子跡5選
私がよく行く「煙樹ケ浜(えんじゅがはま)」から車で30分以内の範囲でも、王子跡は幾つもあります。今回はその中でも特にアクセスしやすい場所を紹介します。
どれも車で回れますが、駐車スペースがない場所が多いので、駐車には十分ご注意ください。
① 海士王子跡(あまおうじ)

場所:JR御坊駅とJR道成寺駅のほぼ中間、JR紀勢本線の北東側
🚗 :煙樹ケ浜から約20分
この王子跡は、熊野詣と関わりが深い「道成寺(どうじょうじ)」のすぐ近くにあります。道成寺といえば、安珍・清姫伝説や歌舞伎『娘道成寺』で有名な寺院。さらに、文武天皇の夫人・宮子の生誕地(九海士の里)という伝承も残っています。
釣りの合間に訪れれば、歴史ロマンあふれるひとときを過ごせるでしょう。

② 岩内王子跡(いわうちおうじ

場所:御坊大橋南詰、岩内簡易郵便局の近く
🚗 :煙樹ケ浜から約15分
この王子跡は、かつて日高川の氾濫による水害を受けやすい場所にありました。明治41年(1908年)に熊野神社(御坊市熊野)に合祀され、現在は「焼芝王子(岩内王子)神社旧跡碑」が残るのみです。
「歴史的な史跡を巡りながら、かつての熊野詣を偲ぶ」そんな体験を味わうことができます。
③ 塩屋王子跡(しおやおうじ)

場所:御坊市塩屋町北塩屋、王子川河口部の丘陵上
🚗 :煙樹ケ浜から約25分
この王子跡は、国の史跡にも指定されている由緒正しい場所。熊野九十九王子のひとつで、「紀伊路」に設けられたことからも重要な地であったことがうかがえます。
現在は「塩屋王子神社」として名残をとどめており、歴史好きな方には特におすすめ。

④ 上野王子跡(うえのおうじ)

📍 場所:国道42号線、御坊市名田町上野のセブンイレブン近く
🚗 :煙樹ケ浜から約30分
1200年前、上野の地は中世の宿所として重要視されていたと考えられています。当時の旅人たちは、この場所で休憩しながら熊野を目指していたのかもしれません。
かつては、「仏井戸」付近にあったものが江戸時代初期に移動し、今の位置に残っています。
⑤ 津井(叶)王子跡(つい/かのう おうじ)

場所:国道42号線を南下、「JA紀州 フレッシュマート特産品直売所」近く
🚗 :煙樹ケ浜から約30分
⚠️ 駐車スペースに難あり
「叶王子」は、地元では「おかのさん」の名で親しまれています。明治41年(1908年)に山口八幡社に合祀され、その跡地には「叶王子神社旧跡」の標石が残っています。
歴史的な雰囲気が残る静かな場所ですが、駐車スペースが少ないため訪れる際は注意が必要です。

実際に巡ってみて感じたこと
今回紹介した王子跡は、いずれも釣りの合間に気軽に訪れることができるスポットです。道案内については詳細な説明が難しいですが、現代はカーナビやスマホのマップアプリがあるので、比較的簡単にアクセスできます。
もしも釣行中にスケジュールが狂ってしまったら、ぜひ今回紹介した「熊野古道の王子跡巡り」を試してみてください。
歴史の足跡を感じながら、次の釣りの時間を待つ——そんな新しい釣行スタイルを楽しんでみてはいかがでしょうか?