「秋の波止釣りが本格的になるのは、やっぱり11月に入ってからかな」
そんなことを考えながら、今年の釣果を振り返っている。
確かに、秋の釣りはこれからが本番なのかもしれない。けれど、どうにも気になるのが「去年の今頃は、もっと釣れていたはず」という記憶だ。
そこで昨年の釣行記録を引っ張り出してみた。
すると、やっぱり釣れている。
「釣れていたようだ」と書いてしまえば、どこか他人事のように聞こえる。しかし、今年の釣れない状況を目の前にすると、昨年の釣果は遠い昔の、楽しかった思い出のようにさえ感じられてしまう。

記憶を頼りに、あれこれ試してみる
魚が釣れないからといって、ただ嘆いているだけでは面白くない。
昨年はどんな場所で、どんな時間帯に、どんな仕掛けで釣っていたのか。潮はどうだったのか。魚の反応はどんな感じだったのか。
過去の記憶をたどりながら、あれこれと試してみる。
しかし、釣り人がどれだけ工夫したところで、肝心の魚がいなければ釣れるはずもない。
「仕掛けが悪いのか」
「狙う時間が違うのか」
「潮が悪いのか」
いろいろ考えてみるものの、どうも今年は魚そのものの動きが違うように思えてならない。
そんな中、三日前の早朝に驚くような話が飛び込んできた。
友人から電話があり、「明け方に大きな太刀魚が3本、立て続けに釣れた」という。
これは気になる。
「ほかにも釣った人がいたのか?」
そう聞くと、このところ釣れていないこともあって、その日の波止で竿を出していたのは友人を含めて二人だけだったらしい。
つまり、その二人で大きな太刀魚を3本。
これはひょっとすると、太刀魚の回遊が始まったのではないか。
そう思うのも無理はない。
ところが、残念なことに、その日は私には野暮用があり、釣行していなかった。

翌朝、期待を胸に波止へ
当然のように「太刀魚が回ってきた!」と思い込んだ私は、翌朝はいつもより早起きした。
一番良さそうな釣り座を確保し、まだ暗いうちから夜明けを待つ。
前日に太刀魚を仕留めた友人も来ている。
話を聞いた仲間たちも並んで竿を出している。
これだけ条件が揃えば、いやでも期待してしまう。
しかし、結果は――。
太刀魚は釣れなかった。
代わりに釣れたのは、なんとサメが2匹。
私だけではない。
前日に太刀魚を釣った友人や、話を聞いてやって来た仲間たちも竿を並べていたが、そのうち二人にも、それぞれサメが1匹ずつ掛かった。
サメ祭りだ。
太刀魚を期待して集まった釣り人たちが、サメを相手にすることになったわけだ。
落胆して帰ったのは言うまでもない。

太刀魚もアジもサメに阻まれている?
「太刀魚がいなくても、せめてアジくらいは釣れるだろう」
そんな淡い期待もあった。
ところが、こちらもサメに邪魔をされる。
こうなると、
「太刀魚もアジも、こんなにサメがいるのでは湾内に近づけないのではないか」
そんなことまで考えてしまう。
もちろん、魚の行動を簡単に説明できるほど海は単純ではない。
たった一日の釣果だけで「今年は魚がいない」と決めつけることもできない。
それでも、昨年と今年の違いを実際に海辺で感じていると、何かが違っているように思えてくる。
そして、そんなことを考えているうちに、ふと「雨」のことが頭に浮かんだ。

雨が少ない今年の夏
このところの大雨で、各地では大きな被害が出ていると聞く。
被害に遭われた地域のことを思えば、災害につながるような大雨など、もちろん願うものではない。
一方で、昔から雨の多い当地では、今年はむしろ雨不足が気になる。
農作物の生育への影響も懸念されているという。
「気候のバランスが崩れてしまったのだろうか」
そんなことを考えてしまう。
雨が降れば川を通じて山から海へ水が流れ込む。
山に降った雨は大地を潤し、川となり、やがて海へと注ぐ。
私たちはつい、山と海を別々のものとして考えてしまいがちだが、実際には一本の水の流れでつながっている。
海の魚たちも、陸から流れ込む水や、それに運ばれてくるさまざまな栄養の影響を受けているはずだ。
もちろん、今年の釣果不振が雨不足だけで説明できるわけではない。
水温、潮流、海流、ベイトの動き、天候など、海の中ではいろいろな条件が複雑に絡み合っている。
それでも、海辺に通っていると、「山と海はつながっている」ということを実感させられる瞬間がある。

秋の海は、これからどう変わるのか
去年の今頃はもっと釣れていた。
そう思って記録を調べてみると、やはり昨年はそれなりに魚が釣れていた。
だからこそ、今年の海の静けさが余計に気になる。
とはいえ、秋はまだ始まったばかり。
三日前には大きな太刀魚が3本釣れたのだから、魚が完全に姿を消したわけではない。
たまたま群れが入ったのかもしれないし、これから本格的な回遊が始まるのかもしれない。
そう考えれば、まだ悲観するのは早い。
「明日は釣れるかもしれない」
その期待があるから、釣れない日が続いても、また波止へ足を運んでしまう。
秋の波止釣り本番は11月に入ってからなのかもしれない。
それまでに適度な雨が降り、山も川も海も、少しずつ本来のリズムを取り戻してくれればありがたい。
災害をもたらすような雨は御免だが、秋を迎えるために必要な恵みの雨は、ぜひとも降ってほしい。
そして次に波止へ立ったときには、サメではなく太刀魚やアジが竿を曲げてくれることを願いたい。
「去年はもっと釣れていた」
そんな思い出話ではなく、
「今年も、あの頃から釣れ始めたな」
と振り返れる日が来ることを期待しながら、もうしばらく秋の海に通ってみようと思う。